「なんとなく毎日しんどい」「寝つけない」「人間関係でつまずく」。
こうした生きづらさは、単なる“症状”ではなく、いくつかの要素が重なった“状態”として起きています。
私は中度ADHD・軽度ASDと診断されていますが、最初の「生きづらいかも?」から診断に至るまでに、精神科を10年で5つ回りました。
原因が分からないまま受診すると、何を話せばいいかも分からず、ただ消耗するだけでした。
精神科は診断をもらう場所ではなく、特性や心のクセを“どう扱うか”を一緒に考える場所です。
そのためには、受診前に「自分の状態」「困りごと」をざっくり整理しておくことが、いちばん再現性の高い準備になります。
この記事では、初診のハードルを下げるために、生きづらさを整理するための最小限のロードマップをまとめました。
この記事の流れ
- 生きづらさを3つの軸(睡眠・感情・行動)で整理する
- 専門家的な質問で「困りの正体」を切り分ける
- 精神科医の“力量差”を見極めるチェックポイントを知る
- 初診で何をどう伝えればいいかを準備する
診断が目的ではなく、「自分は何に困っているのか」を言語化できるようになること。
そのための最短ルートを、当事者としての経験から整理しました。
なお、自分の状態をうまく言語化できない場合は、こちらの「状態整理プロンプト」を使うと整理が一気に進みます。
まず整理すべきは3つだけ
睡眠
私の場合、一番ベースにあったのは睡眠でした。物心ついた頃から入眠に2〜4時間かかり、大学生の頃から頓服の睡眠薬を使うようになりました。
社会人・産後になると、この睡眠不足が生活全体を揺らす“根っこ”になりました。
あなたも、まずは次の4つだけ見てみてください。
- 寝つくまでにどれくらい時間がかかるか
- 夜中にどれくらい目が覚めるか
- 朝起きたときに「寝た気」がするか
- 平日と休日で睡眠パターンがどれくらい違うか
感情
私は衝動性とセットで、不安や自己否定が強く出やすいタイプです。
「私なんていない方がいい」という思考に一気に振れてしまうこともありました。
ここで大事なのは、「落ち込むかどうか」そのものよりも、どのタイミングで・何をきっかけに・どのくらいの強さで感情が動くかです。
- 一日の中で不安やイライラが強くなる時間帯はいつか
- どんな出来事のあとに、落ち込みやすいか
- 感情が荒れたとき、「寝不足」とセットになっていないか
- 感情が落ち着くまでに、どれくらい時間がかかるか
行動
発達特性の相談でよく話題になるのが、衝動性・ミス・人間関係のトラブルです。
私も、衝動的な言動でパートナーを傷つけてしまい、「またやってしまった」と自暴自棄になるパターンがありました。
難しい専門用語はいりません。次の問いに答えてみるだけでも、かなり整理が進みます。
- どんなときに、言わなくていいことを言ってしまうか
- どんな種類のミスを、繰り返しやすいか
- 「また同じことをやっている」と自分で感じる場面はどこか
- その前後に、睡眠不足や強いストレスはなかったか
睡眠・感情・行動。この3つだけをざっくり整理するだけでも、自分の状態の輪郭がかなり見えてきます。
状態を切り分けるための質問
専門家的な問いで“困りの正体”を見える化する
「状態を言語化してください」といきなり言われても、一般の人にはかなり難しいです。
ここでは、私が医者側だったら聞きたいと思う“専門家的な問い”をテンプレートとしてまとめます。
紙やメモアプリ、あるいはChatGPTなどに投げて、ひとつずつ答えを書いてみてください。
これがそのまま、初診のときに役立つメモになります。
まずは、この3つだけ書けばOKです。
- ここ半年で、一番しんどかった時期はいつか? そのとき何が起きていたか?
- 一週間のうち、「普通の日」と「かなりしんどい日」は何日くらいか?
- 今いちばん困っていることを3つ挙げるなら何か?
余裕があれば、次の項目もメモしておくと初診で役立ちます。
- しんどさがピークになる時間帯
- 寝つき・夜中の目覚め・起きた時の疲れやすさを、10点満点で評価するとしたら何点か
- 最近のトラブル(仕事・家庭・人間関係)で、「これは自分のクセが出たな」と感じたもの
- そのトラブルの前日・当日の睡眠や体調
ChatGPTを“専門家の壁打ちツール”に変える魔法のプロンプト例は別記事で紹介しています。
初診に行く前に、不安があればこちらのプロンプトで一度整理してみてください。
因果の流れをつかむ(汎用モデル)
ある程度、質問に答えが書けたら、「矢印」でつないでみるのがおすすめです。
たとえば、私の場合はこんな感じでした。
睡眠不足 → 疲労感の増加 → 不安が暴走 → 衝動的な言動 → 自己嫌悪・自己否定
人によって矢印の流れは違いますが、
- 睡眠(量・質)の問題
- 感情(不安・怒り・落ち込み)の揺れ
- 行動(ミス・衝動・回避)のパターン
この3つが、どんな順番で悪化していくのかをざっくり掴むだけでも十分です。
精神科の初診では、この「因果の流れ」を短時間で聞き取ることになるので、事前に整理しておくと話が通りやすくなります。
精神科医は“力量差が大きい”
制度上ばらつきが出る理由
精神科は、他の診療科と比べて医者の力量差がとても大きい分野です。
これは個人の性格ではなく、制度の構造によるところが大きいです。
開業のハードルが比較的低く、他科から精神科に流れてくる医師も一定数います。
そのなかには、前職の診療科や勤務歴をはっきり書かないまま開業している人もいて、患者側からは専門性や経験値が見えにくいことがあります。
大学医局でしっかり研修を積んだ精神科医もいれば、そうでないルートの優秀な精神科医もいます。
なので「大学出身かどうか」よりも、経歴がどれだけ透明かのほうが重要だと私は感じています。
▼ ここからは「危ないかも」なクリニックの見分け方です。
危険クリニックのチェックリスト
一般の人でも確認しやすい、「これはちょっと警戒したほうがいい」ポイントを挙げます。
当てはまるからといって即NGではありませんが、複数当てはまる場合は慎重に検討したほうがよいと感じています。
- HPに「前職の診療科」が書かれていない(最重要)
- 「大学卒業 → ○○センター勤務」など、施設名だけで科名が伏せられている
- 専門医資格(精神科専門医・精神保健指定医など)が一切書かれていない
- 初診の予約が当日〜翌日レベルで簡単に取れる
- 「診断書すぐ書きます」とHPでアピールしている
- 初診から睡眠薬・安定剤を大量に処方したがる
- 初診で発達障害の診断名を即断する(紹介状・詳細レポートなしで)
- 問診の中で「薬に抵抗はありますか?」という確認がない
- 診察時間が極端に短く、生活の話をあまり聞かない
私自身、経歴が微妙なクリニックにかかって、状態がむしろ悪化した経験があります。
精神科は「どこでも同じ」ではないので、Googleマップで上から順に行くのではなく、HPをしっかり読むことをおすすめします。
▼ 次に、「良さそうな医者」の特徴です。
信頼できる精神科医の特徴と診断スピード
「ここは信頼できそう」と判断しやすいポイントもあります。
- HPに前職の診療科・勤務病院・専門医資格などが明記されている
- 大学病院や大規模病院での精神科勤務経験がある
- 初診で、睡眠・感情・生活・既往歴について丁寧に質問してくる
- 薬の処方方針を説明し、「薬に抵抗はありますか?」と確認してくる
- 発達障害の診断を初診だけで断定しない(慎重さがある)
- 薬だけでなく、生活リズムや環境調整の話が必ず出てくる
発達特性の評価には本来ある程度の時間がかかりますが、例外もあります。
発達障害はグラデーションであり、特性の濃度が高かったり、生活上の困りごとが明確な場合は、初診〜数回の診察で診断がつくケースもあります。
一方で、私のように特性の濃度が中程度で、睡眠・不安・衝動性など複数の要素が絡み合っているタイプは、評価が難しく診断まで時間がかかることが珍しくありません。
私は大学時代に「生きづらさ」で初めて精神科に行ってから、社会人までの約10年間で5つの精神科をハシゴし、ようやくADHD/ASDの診断にたどり着きました。
つまり、診断が早い人と時間がかかる人がいるのは「特性の有無」ではなく、困りごとの構造や濃度の違いによるものです。
診断までのスピードに一喜一憂する必要はなく、それぞれのプロセスが違って当たり前だと考えています。
私が診断に至るまでの記録はこちらの記事にまとめています。
初診で何を話せばいいか
症状ではなく生活の困りを伝える
初診では、「診断名を当ててもらう」ことが目的ではありません。
それよりも、生活のどこで困っていて、何が一番つらいのかを伝えることのほうが重要です。
たとえば、こんなふうに整理して話せると、医師側も状況をつかみやすくなります。
- 睡眠:寝つき・途中覚醒・起床時の疲れやすさ
- 感情:不安・イライラ・落ち込みの出やすい場面
- 行動:ミス・衝動・対人トラブルの具体例
- 困りごとの優先順位:今すぐ何とかしたいのはどれか
メモを使って、“診断”を道具として扱う
初診前にこの記事の質問テンプレに答えてメモを作っておけば、それをそのまま医師に見せても構いません。
口頭だけで説明しようとすると抜け落ちやすいので、メモで補助するくらいの感覚で大丈夫です。
診断がつくと、安心する部分も、ショックな部分もあります。
私自身、中度ADHD・軽度ASDという結果は「だろうな」と思いつつ、どこかでホッとしたところもありました。
ただ、診断名がついたからといって、特性そのものが劇的に変わるわけではありません。
診断はあくまで、「自分はこういう傾向がある」という地図を手に入れるための手段です。
本当に大事なのは、その地図を見ながら、
「じゃあ、どう付き合っていくか」「どこを薬で補い、どこを生活の運用でカバーするか」を考えていくプロセスだと思っています。
まとめ
状態を理解すれば受診は怖くなくなる
精神科に行くハードルが高いのは、
「何を話せばいいのか分からない」「自分の状態がうまく説明できない」という不安が大きいからだと思います。
逆に言えば、睡眠・感情・行動の3つをざっくり整理し、いくつかの質問に答えてメモを作っておくだけで、初診のハードルはかなり下がります。
扱い方を知ることが“生きづらさ”の第一歩
もちろん、特性があるからといって、家族や周囲を攻撃していい理由にはなりません。
ただ、「自分は攻撃性や不安が出やすい気質だ」と一度認めることで、初めて対策も立てやすくなります。
私にとって、薬は「視力が低い人のメガネ」に近い存在です。
メガネをかけたからといって目そのものが治るわけではありませんが、事故を防ぎ、生活の質を上げるための大事な補助ツールです。
発達特性や生きづらさも、それに少し似ています。
特性そのものはすぐには変わりませんが、精神科や薬、生活の運用、周囲の理解といったツールをうまく組み合わせることで、
「これ以上悪化させない」「事故を減らす」ことは十分にできます。
生きづらさを感じているなら、いきなり診断を取りにいくのではなく、まずは自分の状態を整理するところから始めてみる。
そのうえで、「必要なら専門家に相談する」という順番でも、まったく遅くはありません。
この記事が、その最初の一歩を踏み出すときの参考になればうれしいです。






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