「頑張っているのに昇進しない…」
「同期は上がっているのに、自分だけ止まっている気がする…」
まず押さえておきたいのは、昇進は“能力だけ”では決まらないということです。
もちろん、能力が低ければ話になりません。
ただ、上司が昇進を考えるときに見ているのは、
- 仕事の実力(基礎能力)
- 任せた仕事に対する責任の持ち方
- 相談・エスカレーションのタイミング
- 周りを巻き込む動き方
- 部署や会社の事情との噛み合い
このあたりの「総合点」です。
昇進は、決まったレーンをただ走る“レース”というより、
長いマラソンの途中途中で「今この人を一段上に上げても大丈夫か?」を判断されているイメージに近いです。
この記事では、
その判断を止めてしまいやすい5つのボトルネックと、
そこから巻き返すための5つのステップを整理します。
この記事でわかること
- 昇進が「能力だけ」で決まらない理由
- 上司が「一段上に上げにくい」と感じる5つのポイント
- 休み方・優先順位・相談の仕方が評価にどう響いているか
- 「上司が悪い」「会社が悪い」で片づけないための整理の仕方
- 今から巻き返すための具体的な動き方
昇進は「能力」+「責任の持ち方」+「会社事情」の掛け算
上司側の感覚を一言でいうと、
「この人に、今より一段大きい責任を乗せて大丈夫か?」
能力はその一部です。
ただそれ以上に見られているのは、
- うまくいかなかったときにどう動くか
- 自分一人で抱え込まず、必要なところに相談できるか
- 周りを巻き込んでゴールまで持っていこうとするか
さらに現実問題として、
- 昇進枠の数
- 部署としての方針(拡大/縮小)
- 上司が誰を押したいか
といった会社の事情も、あなたの実力とは別に存在します。
ここから先は、
「能力が足りないから昇進できない」という自己責任論でも、
「全部会社が悪い」という被害者モードでもなく、
「どこが詰まっていると、上に上がりにくいのか」を冷静に分解していきます。
昇進が止まりやすい5つのボトルネック
① 任された仕事に対する「責任の持ち方」があいまい
ここでいう責任は、
「一人で全部できること」ではありません。
上司から見て安心なのは、
- 自分でやれるところまでは、ちゃんとやってくれる
- 自分だけでは判断しきれないところは、早めに相談してくれる
- 期限に間に合わないと分かった時点で、正直に言ってくれる
この3つが揃っている人です。
逆に「任せにくい人」の典型は、
- 「お願いします」→「分かりました」で受ける
- 途中の状態を一度も見せない
- 締切間際になって「やってみたけど無理でした」「これからやろうと思ってました」と出してくる
このパターンが続くと、
上司は「この人に投げると、どこまで任せてよくて、どこから自分が拾えばいいのか分からない」と感じます。
休み方や体調の波の問題も、本質はここに含まれます。
- 休むことで、どのタスクにどう影響が出るかを一緒に考えられるか
- 「ここから先はお願いしたい」と、ちゃんとタスクの行き先までセットで相談できるか
ここができる人は、
全部自分で完走できなくても「安心して仕事を任せられる人」として見られます。
稼働の「見え方」については、こちらの詳細記事も:
② 段取りと優先順位の組み立てが甘い
「やりやすい仕事から手をつける」こと自体は、
余裕があるスケジュールなら、むしろ合理的なこともあります。
ただ問題になるのは、
- 外部への申請・承認
- 他部署への依頼
- 上司の確認が必要な箇所
こうした「時間がかかるポイント」を後回しにしてしまう場合です。
上司が本当に見たいのは、
- どこで詰まりそうかを事前に把握しているか
- リードタイムが長いものから、ちゃんと先に投げられているか
- 「今日中に」と言われたとき、その「今日」の中でいつまでを想定しているか
ここを握らずに進めていると、
「優先順位がズレている人」「ゴールから逆算できていない人」と見なされます。
優先順位の整え方は、こちらで詳しく書いています


③ 認知コストが高く、「何を聞きたいか」が曖昧
説明が多少下手でも、上司はある程度は汲んでくれます。
致命的なのは、
- 自分が何に困っているのか整理せずに聞きに来る
- どこまで自分でやって、どこから分からないのかを切り分けていない
- 「わからないことがわからないです」と丸ごと投げてくる
この状態だと、
上司はあなたの頭の中の整理から一緒にやらされることになります。
上司が本当に知りたいのは、
- 自分でここまでやってみた(やったこと)
- ここから先が分からない(詰まっているポイント)
- だから、これを判断/教えてほしい(聞きたいこと)
この3点です。
ここをセットで出せるようになると、
「話が分かりづらい人」から「相談に来たときにすぐ判断できる人」に変わります。
認知コストの話は、こちらの詳細記事が土台になります
④ 「全力」の基準が低く、人を巻き込めていない
上司が困るのは、
- 本当は自分で5割くらいまで進められるのに、1割だけやって「全部分かりません」と返してくる
- 自分で少し調べればわかることを、最初から人に聞きに行く
- 周りに聞いたり、関係部署に確認すれば解決するのに、それをしない
逆に「任せやすい人」は、
- 自分でできるところまではちゃんとやる
- 残りの分からない部分を特定したうえで、人に聞きに行く
- 必要なら、関係部署や外部にも問い合わせに行く(事前に上司へ一言だけ通す)
ここでいう「巻き込む力」は、
責任を押しつける力ではなく、
「ゴールに必要な情報と協力を取りに行く力」です。
電話や対面が苦手だと、ここで止まりやすくなります。
克服ステップはこちら
⑤ 会社の事情・上司との関係を「運」で片づけている
現実として、昇進には会社側の事情も強く影響します。
- 昇進枠が少ない部署
- 拡大ではなく縮小フェーズにある部署
- 今の上司が誰を押したいか
- 過去の経緯から「この人は軽めの仕事に置いておきたい」と見られている人
ただ、これをすべて「運が悪い」で片づけてしまうと、
自分が変えられる部分まで見えなくなります。
閑職も「最初からそこに放り込まれる」のではなく、
いろいろな事情の結果としてそこに置かれていることが多い。
一度落ち着いて、
- 今いる部署が、会社の中でどんな役割なのか
- 上司は何にプレッシャーを感じているのか
- 自分はそこで、何をうまくやれると評価されやすいか
ここを言語化しておくと、
異動や巻き返しの戦略も立てやすくなります。
「なぜあの人が昇進して自分はしないのか」は、こちらで詳しく
ここから巻き返すための5ステップ
ステップ1:自分が詰まっているポイントを、上の5つで棚卸しする
いきなり全部直そうとせず、
「①〜⑤のどこが一番弱いか」をまず1つ決めます。
・責任の持ち方か
・段取りと優先順位か
・相談・質問の仕方か
・全力の基準と巻き込み方か
・そもそも会社の事情を理解できていないのか
ここが決まると、やるべきことがかなり絞れます。
ステップ2:「任され方」と「休み方」に必ずひと言セットで説明をつける
新しくタスクを振られた/休みを取りたいときは、
タスクの行き先まで含めて話すことを自分ルールにします。
- 「ここまで自分でやります」
- 「ここから先で詰まりそうなら、〇〇さんに相談しても良いですか?」
- 「この日に休むと、このタスクは別の人にお願いする必要があります」
こういう話し方が自然にできる人は、
「責任の持ち方が分かっている人」として扱われます。
ステップ3:全タスクに「マイルストーン」と「期限感」をつけて、上司と握る
大きめの仕事は、最初にざっくり分解して、
- 外部・他部署への依頼ポイント
- 上司の確認が必要なポイント
- 「今日中」「今週中」の中で、いつまでに何を出すつもりか
を自分なりに決めてから、
「この進め方で問題ないですか?」と一度聞きに行きます。
こうしておくと、
「優先順位のズレ」「勝手な判断」がかなり減ります。
ステップ4:質問するときは「自分でやった範囲/分からない範囲/聞きたいこと」をセットで出す
相談・質問のチャットや口頭で、テンプレを決めてしまいます。
- 【自分でやったこと】:ここまで調べて/作ってみました
- 【分からないところ】:この部分の判断がつかず止まっています
- 【聞きたいこと】:AとBどちらで進めるのが良いでしょうか?
この3点が揃うだけで、
「話を聞くだけで疲れる人」→「すぐ判断できて助かる人」に変わります。
ステップ5:会社と上司の事情を一度“言語化”してみる
最後に、自分の感情はいったん横に置いて、
- 今の部署は、会社の中でどんな役割か
- この1〜2年で、部署は拡大しているのか、縮小しているのか
- 上司は何に一番プレッシャーを感じていそうか
ここを書き出してみます。
その上で、
- この環境のまま、できるところまで巻き返す
- どうやって異動・転職も視野に入れるか
を考えた方が、「なんとなく不公平だ」とモヤモヤしているより、よほど現実的です。
関連リンク
まとめ(今日ひとつだけやればOK)
今日やってほしいのは、
「自分の昇進を止めているのは、上の5つのうちどこか?」を紙に書き出してみることです。
昇進は、才能だけの話ではありません。
長いマラソンの中で、
- 任された仕事への向き合い方
- 段取りと優先順位
- 相談と巻き込み方
- 会社の事情との付き合い方
を少しずつ調整していけば、
「この人なら、もう一段上の責任を任せられる」という評価は、ちゃんと積み上がります。




